【小児科医が解説】ADHDとは?特徴・診断基準・原因をわかりやすく解説
「うちの子はすぐ気が散るけれど、もしかしてADHD?」
「ADHDという言葉はよく聞くけれど、本当はどんなものかわからない」
情報が多いからこそ、まず知っておきたいのは
ADHDとはそもそも何かという基本です。
この記事では、ADHDの特徴と診断基準、考えられている原因について、
小児科医の視点から医学的に、できるだけわかりやすく解説します。
ADHDとは何か
今日はADHDとはなにか
改めて話そうと思います。
「ADHDっていうけど、本当のところあまりわかってない…」
「うちの子すぐに注意がそれるけど、もしかしてADHD?」
最近ADHDって言葉、よく聞くけど
いろいろな情報があふれていて、何が本当のことかわからない
と思うんですけど
自分の子どもがADHDらしいのかどうか
ADHDってそもそも何か
って知識は必要になると思います。
なぜなら
ADHDって何かを周囲が理解していないと
その子本来の実力が発揮できなかったり
誤った接し方で過度に怒られ自信をなくし
時に不登校やうつになることもあるからです。
逆に正しく理解して、適切な接し方ができれば
実力を十分に発揮したり、自信をもつことができるからです。
今日は、
ADHDとはそもそも何か
ADHDの原因は何か
小児科医の視点から
医学的に、でもわかりやすく
言語化の匠である私が解説します。
ADHDは「病気」よりも「特性」として捉える
まずADHDとは一言で言うと
特性です。
多動・衝動・不注意の3本柱からなる「特性」と考えると理解しやすいです。
わかりやすくいうと
脳の操作パネルの得意不得意。

なぜなら病気というよりは
脳のコントロール機能に特徴がある状態が
ADHDだからです。
具体的には病気、例えば風邪だと
異常な状態、治せば普通になるってイメージ。
ADHDは病気といっても間違いではないのですが、
ちょっとイメージが違っていて
- 行動を止める。
- 待つ。
- 注意を向ける。
といった脳のコントロール機能が難しい状態が
ADHDです。
結果として多動・衝動・不注意を起こす。
「治す治さない」の問題というよりは
脳の操作パネルの得意不得意です。
だからADHDは単に「病気」というよりは
行動、衝動、注意のコントロールに偏りがある
体質、特性です。
イメージは花粉症の方が合ってる。
花粉症も病気だけど、イメージは体質。
ただし体質、特性であっても
その特性によって困りごとが続く場合は
診断や支援、助ける対象です。
だから発達特性のことでよく言われますが
大事なのは叱って治すことではなく
その子の特性にあった環境と支援を作ることである
ということにつながるんです。
ここまではADHDは
- 多動。
- 衝動。
- 不注意。
からなる特性と説明しました。
でも多動・衝動・不注意って抽象的すぎる。
そこで具体的な詳しい診断基準を紹介します。
ADHDの診断基準
診断基準というのは
これが揃えばADHDですという基準です。
現在DSM-5-TRというのが広く使われています。1)
DSMとはアメリカ精神医学会が出している精神疾患の診断・統計マニュアル。
5は第5版。
TRは改訂版って意味です。
わかりやすく言うと神経発達症の世界の広辞苑です。
その最新版が第5版改訂版です。
ADHDやASDという言葉を、みんなが同じ意味で使うための基準です。
そしてADHDのところを見てみます。
いや長くて多い。
ちょっとずつ見ていきましょう。
不注意と多動性・衝動性
簡単にいうとA-Eの5項目からなっています。
AがADHDとはという基準で
不注意の特徴が9つ羅列されていて
子供では9個中6個満たすとADHDの不注意判定
多動性、衝動性の特徴が9つ羅列されていて
子供では9個中6個満たすと多動性、衝動性の判定
たとえば不注意の(1)の内容はこんな感じ
例えば
・細かいミスが多い、注意が抜ける
・話しかけられても聞いていないように見える
・外からの刺激で気が散りやすい
(2)多動性・衝動性は
例えば
・座っているべき場面で席を離れる
・じっとしていられず、エンジンで動かされているよう
・質問が終わる前に答えてしまう
そして注意事項として6か月持続していること
とされています。
SNSなどで見るような
ADHDの特徴というのは
このAからなっているのではないでしょうか。
ただここで終わらず
B-Eとして補足があります。
診断には特徴以外の条件も必要
Bは
12歳より前から存在していること。
Cは
家庭、学校、職場などの中で2つ以上の場所で存在していること
といった条件です。
これは
周りの環境のせいで不注意になっている
例えばストレスの多い学校でだけなる
みたいなものを除いて
本人の特徴、うまれもった体質としてADHDであることに
絞るイメージと思っています。
D.これが重要と思っていて、SNSだと軽視されがち。
これらの症状が社会的、学業的、職業的機能を損なわせていること。
つまり簡単に言うと生活に支障があるか。
「特徴があるか」だけでなく
「学校や職場で困っているか」も見ます。
そしてEは
うつ病、自閉スペクトラム症だとか睡眠不足、薬のせいなど他の病気、原因ではないという条件です。
これも重要です。
他の病気でもADHDのような症状が出ることがあるんです。
例えば身体疾患の甲状腺機能亢進症っていって、からだのアクセルを踏むようなホルモンが出すぎる病気があります。
すると多動、動きが多くなることがあります。
他には睡眠時無呼吸で眠れていない、アトピーでかゆいからADHDみたいに見える、それを治療するとよくなる、なんてこともあります。
そう、さっきの多動不注意が全部ADHDじゃないし
治せる病気なら治すのが重要です。
これがさっきのB、12歳より前から存在することも関わってくる。
ADHDは体質、特性なので、
いままで違ったのに、ある時から症状が出たときは注意が必要です。
ここで
「うちの子3歳で、外からの刺激で気が散りやすいし、じっとしていないけどADHDなの?」
と思うかもしれません。
そう子どもってそもそも不注意だし多動だし衝動性があるので判断が難しい
幼児期のADHDを判断するとき
一般には4歳頃から年齢と比べて強い場合
そしてD、
社会的に悪影響を及ぼしている場合にADHDの可能性を考えます。
ADHDは特性と言いましたが
その特性でいろいろな人生の場面
小学校、中学校、社会人になった後
その場面で特性により困難が生じたときに
ADHDとなるんです。
ADHDの診断基準は変化している
一つここで興味深いのは
さっきのDSM、広辞苑、改訂のたびに
ADHDの基準が変わるんです。
なぜなら
ADHDは最近になって医学の対象
つまり病気のように扱おうとなり、
今もなお概念が変わり続け
固定化されていない、
これで決まりとなっていないからです。
具体的には
ある時には多動に重点が置かれたり
その後に不注意に重点が置かれたり。
他の病気との違い
例えば
高血圧だったら血圧がいくつ以上
糖尿病だったら血糖やHbA1cがいくつ以上
と明確な数字で線を引きやすいですが
ADHDは特性
そのような検査値でここから上がADHD
MRI、脳の画像でこの異常があればADHD
とはっきりとした客観的な数値それがないんです。
たとえば『優しい人』って
1日に何回ありがとうと言ったら優しい
何秒以内に席を譲ったら優しい
みたいに測りませんよね。
行動、表情、言葉、状況への反応を見て
『この人は優しいな』と判断します。
ADHDもそんなイメージ。
不注意、多動性、衝動性が年齢に
比べて目立っていること
家庭や学校での困りごと
そういう複数の情報を合わせて
その子の特性として理解していきます。
だから
基準が変わり、今もがっちりと固定化していないんです。
ADHDの原因
ここまではADHDとは
多動、衝動、不注意からなる特性
そしてその多動、衝動、不注意の具体的な項目を説明してきました。
ここで気になるのは原因
ADHDって遺伝するの?
しつけのせいなの?
気になると思います。
ここからはADHDの原因について話そうと思います。
結論
ADHDの原因の一部に遺伝や脳の構造はあるが
その異常で個人をADHDと診断するほどではない
です。
大事なのでやや細かく書きました
ADHDの原因は特定されていません。
ホルモンのバランス
一つの説はホルモンのバランス
ドーパミンやアドレナリンといったカテコラミンという注意力、覚醒度、警戒心などの調節に関係するホルモンのアンバランスさが原因という説です。2)
ADHDの治療薬がホルモンを調節する薬であることからも
その説が支持されています。
遺伝的な要因
他には遺伝的な要因
ADHDの子どもにADHDが多い報告3)や
各国で実施された双子の研究が一貫して
74%程度の遺伝率を示している報告4)
があります。
なのでADHDの原因として遺伝もあるといわれています。
実際ADHDに関連する遺伝的変異が特定されています。
遺伝的変異というのは簡単に言うと
百科事典の誤字・脱字です。
遺伝子というのは百科事典に例えるとわかりやすいです。

人間の情報が百科事典に記録されているとして
例えば遺伝がかなり関係する病気
筋ジストロフィーという病気の一部は
このページのこの文章が抜けていると
筋肉を作れなくなるこの病気になるといった具合に
現在の医療で解明されています。
そしてADHDでも
ADHDに関係する遺伝子変異
百科事典の文字がこうなっているとADHDになりやすい
という場所が同定されています。5)
しかし、ADHDではこのように
1か所の文字が違うから
ADHDに絶対なる、なければ絶対ならない
そこまでの確定した原因、部分はありません。
そしてADHDに関係する部分がいくつもあって
それらの誤字が多ければ多いほど
ADHDになる確率が上がる。
こんなイメージ。
脳の構造
ADHDの原因として遺伝のほかに
脳の構造、形が異なるとも言われています。
ADHDの子とADHDでない子の脳の画像をみると
多くの場所で差があると報告されています。
特に例えば前頭葉、脳の前の部分で顕著であり
前頭前野皮質の容積減少
簡単に言うと
脳の表面の皮のような部分が薄いなど報告されています。6)
ただこれも
「この部分の体積がこれより小さいとADHD」
と個人を診断するのに使えるほどのものではないです。
なぜなら
その大きさの差はわずかであったり
年齢がたつと差が減ったり
ある研究では差がないと言われたり
するからです。
ここまで
ADHDとはそもそも何なのか
ADHDの原因は何なのか
話してきました。
まとめ
まとめです。
ADHDは
多動、衝動、不注意の3つからなる
イメージ病気というよりは体質、特性
ADHDと判断するには特徴を満たすこと以外に
困りごとがあること
違う原因でないことを示すこと
が必要。
ADHDの原因に関しては
一部に遺伝や脳の構造はあるが、個人を診断するほどではない
これが私の意見です。
ここまで読んでくださったあなたは
とても勉強熱心だと思います。
また私は
「うちの子がADHDではないか?」と考えることは
悪いことではないと思っています。
ADHDは、「落ち着きがない子」に貼る便利なレッテルではありません。
ただ脳の操作パネルの得意不得意を
親が周囲が理解すれば
最終的には本人が理解すれば
何でもしつけのせいにしたり、
失敗ばかりして自信を削られたり、
そういったことを減らせると思っているからです。
是非、一緒に子どもの育児の困りごとや悩みを解決できたらと思います。
なにか困りごとや悩みがあれば
是非コメントしてください!
参考文献
1) DSM-5-TR
2) Increased noradrenergic activity in prefrontal cortex slices of an animal model for attention-deficit hyperactivity disorder–the spontaneously hypertensive rat. Behav Brain Res. 2000 Dec 20;117(1-2):69-74.
3) Toward guidelines for pedigree selection in genetic studies of attention deficit hyperactivity disorder. Genet Epidemiol. 2000 Jan;18(1):1-16.
4) Faraone SV, Larsson H. Genetics of attention deficit hyperactivity disorder. Mol Psychiatry. 2019 Apr;24(4):562-575.
5) Attention deficit hyperactivity disorder. Lancet. 2016 Mar 19;387(10024):1240-50.
6) Anomalous Brain Development Is Evident in Preschoolers With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder. J Int Neuropsychol Soc. 2018 Jul;24(6):531-539.

