【小児科医が解説】ADHDは親の育て方が原因?脳との関係を医学的に解説
「私の育て方が悪かったんでしょうか」
「もっと厳しくすればよかったのか」
ADHDのお子さんを育てる親御さんから聞く言葉です。
しかし、ADHDを「親の育て方のせい」にするのは、
医学的に正しくありません。
この記事では、
- ADHDの原因は何なのか。
- ADHDと脳にはどのような関係があるのか。
- なぜ親や本人の努力不足ではないのか。
医学的な研究をもとに、わかりやすく解説します。
ADHDで生まれやすい2つの誤解
「親が悪い」
「生まれつきだから仕方ない」
どちらも、親子を助ける言葉としては弱いです。
子どもたちは、
筆箱や体操服を、テレワークかってくらい家に忘れていく。
でも親を責めるだけでは、筆箱テレワークは減りません。
遺伝で終わらせても、
体操服は自分でランドセルに入りません。
今回は、この2つの誤解を整理します。
- ADHDの原因は何なのか。
- ADHDは遺伝するのか。遺伝するなら、どの程度の可能性なのか。
- 実際に親ができることは何か。
について話していきます。
早速行きましょう。
ADHDの原因とは何か
結論です。
なぜなら、それを示す医学的な報告がいくつもあるからです。
ADHDの人の脳では、実際に何か違いがあるのか。
まず、脳の「構造」を調べた研究があります。
ADHDの人に報告されている脳の構造の違い
2017年に発表された大規模な研究です。
23施設で、ADHDの人1,713人と、
ADHDではない人1,529人の脳画像を比較しています。1)
その結果、ADHDの人では、
- 尾状核
- 被殻
- 側坐核
- 扁桃体
- 海馬
など、いくつかの脳領域の体積が、
平均的に小さいことが報告されました。
特に、こうした違いは、
大人よりも子どもで目立っていました。
行動や意欲に関係する線条体
尾状核や被殻、側坐核というのは、
「線条体」と呼ばれる領域を構成しています。
線条体は、
- 認知や行動の選択。
- 目標に向かって行動すること。
- 報酬や動機づけ。
などに関わっています。2)
まさに、ADHDの症状との関係が示されるような場所です。
つまり、ADHDでは、
単に「集中する気がない」
「我慢が足りない」という話ではありません。
脳の発達や構造そのものに、
集団として違いが見つかっています。
ほかにも、ADHDにおいて、
脳の形の違いを示す報告は多くあります。
ADHDとドパミンの関係
ただし、違いが報告されているのは、
「脳の形」だけではありません。
脳の中で情報を伝えるドパミンという神経伝達物質も、
ADHDに深く関わっていると考えられています。3)
ドパミンは、前頭前野や、
さっきの線条体などの回路を調節して、
- 注意を維持する。
- 衝動を抑える。
- 頭の中に情報を置いて考える。
といった働きに関係しています。
実際、ADHDの治療に使われる
メチルフェニデートやアンフェタミンなども、
ドパミンの働きを調節することで、
効果を発揮すると考えられています。
脳画像だけでADHDとは診断できない
ただし、
「ADHDは脳のこの部分が小さい病気です」
「ADHDはドパミンが少ない病気です」
と、単純に言えるわけではありません。
「この脳の違いがADHDを直接引き起こした」とまで、
証明されているわけでもありません。
脳画像だけを見て、
ADHDと診断できるわけではありません。
ここまでをまとめると、
「脳の構造や機能の違い」が、
不注意、多動、衝動性といった
ADHDの症状につながっていると思われる。
ただし、それだけで診断につながるようなものではない。
イメージは、地図と渋滞くらいの関係です。
地図から、
「ここは橋だから渋滞しそう」
「ここはトンネルだから渋滞しそう」
というところまではわかります。
しかし、実際に渋滞しているかは、
生活を見てみないとわかりません。
そんな感じです。
親のせいでも本人の努力不足でもない
脳の問題であれば、
親の育て方のせいでもなければ、
本人の努力不足でもありません。
「もっと厳しく育てればよかった」
「自分のしつけが悪かった」
と、自分を責める必要はありません。
一方で、生まれつきの特性だからといって、
周囲にできることが何もないわけでもありません。
その子の特性を理解し、
過ごしやすい環境や適切な支援を考えることが大切です。
次回はADHDと遺伝について
次回は、
ADHDって遺伝するのか?
遺伝するなら、どの程度の可能性なのか?
についてお話しします。
困りごとやご質問があれば気軽にコメントしてください。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
参考文献
- Hoogman M, Bralten J, Hibar DP, et al. Subcortical brain volume differences in participants with attention deficit hyperactivity disorder in children and adults: a cross-sectional mega-analysis. Lancet Psychiatry. 2017 Apr;4(4):310-319.
- Haber SN. Corticostriatal circuitry. Dialogues Clin Neurosci. 2016 Mar;18(1):7-21.
- Volkow ND, Wang GJ, Newcorn JH, et al. Motivation deficit in ADHD is associated with dysfunction of the dopamine reward pathway. Mol Psychiatry. 2011 Nov;16(11):1147-54.

